予定変更です。
葺きたての屋根に遭遇する機会がありましたので、ご紹介します。
インの葉で葺いた屋根 The roof thatched by leaves of In (Dipterocarpus tuberculatus) |
そのインの葉を葺き替えて一週間しか経っていないという家に会ったのだ。
まず、このインというのはビルマ語での呼び名で、学名をDipterocarpus tuberculatusと言い、フタバガキ科フタバガキ属に含まれる樹木である。
フタバガキ属のほとんどは、枝のないまっすぐの太い幹の上にモコモコした樹冠が丸っこく展開しているカリフラワー状の樹形で、典型的な熱帯の大高木だ。
この属の中でも、インは最も乾燥した地域に進出した樹種で、カリフラワー状の大高木にはならず、年間降水量が2千ミリにも満たないようなところに生育する森で見られる。
その森の中では、インが最も優先しているので、このタイプの森のことを乾性フタバガキ林と呼び、ビルマ語では、インダイン(Indaing)の森と呼んでいる。
乾性フタバガキ林 Dry dipterocarp forest (Indaing forest), Chatthin Wildlife Sanctuary, Sagaing Region |
大きさは、長さ約6フィート(183センチ)幅約8インチ(20センチ)で、この屋根材一枚が、なんと150チャット(約10円)である。
日本でも、内職などはむちゃくちゃ低賃金だが、その手間と技を考慮すれば、もうちょっと取ってもいいように思う。
インの屋根材を重ねる際、3インチ(約7.6センチ)ずらせて重ねると1年葺き替えなくていい、2インチ(約5.1センチ)ずらすと2年、1インチ(約2.5センチ)だけずらしたなら3年持つ、というのである。
インとは生息地域も近いチークは、葉っぱも大きくて似ており、よく混同されがちだが、チークの葉だと一ヶ月も持たずに雨漏りが始まるだろうとのことだ。
ちなみに、インもチークも乾期を必要とする落葉樹だが、インは、より乾いたところ、チークは、やや湿潤なところを好む。
1990年代の前半までは、ミャンマーにはレジ袋がほとんど普及しておらず、たいていの商品は紙袋に入れてくれ、それを持参した籠やバッグに入れて運ぶのがふつうだったが、魚介類などの水気のあるものは、このインの葉で包んでいた。
他にも、バナナやゲットウやチークの葉も使われていただろうが、丈夫さにおいてはインの葉の右に出るものはない。
木材の価値においては、世界最高レベルのチークには足元にも及ばないが、以外にも、葉っぱの利用価値では、インの圧勝なのである。
潜在能力とは、どこに隠れているのか分からないものだ。
乾期まっただ中の乾性フタバガキ林 Dry dipterocarp forest (Indaing forest) in the mid dry season, Shwesettaw Wildlife Sanctuary, Magway Region |
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