ここまで登場した麺類は、ミャンマー土着(どちゃく)と言っていいものだが、ここでは隣国(りんこく)起源で、ミャンマー独自に変異(へんい)したものや、ほぼそのままのものなどをご紹介したい。
麺と言えば中華!もう一つの麺の大国、中国の料理もミャンマーで独自の進化を遂(と)げている。
とは言っても、私は中国に行ったことがないので、ここに載(の)せる写真のものが、どれぐらい中国のものに近いか遠いか、逆に中国通の方に教えていただきたいぐらい。
中華系麺類のエース、油絡めソバ
Oil dressed Chinese noodle
まず、中国の料理としながらも、屋台(やたい)で出されるまでに庶民に浸透(しんとう)している筆頭(ひっとう)が、スィーチェッカウソェだろう。スィーは油のことで、ずばり油絡めソバだ。油食民族、ミャンマーの人が、これを見過ごすはずがない。
分類的には汁なし系で、調味油に湯切りした中華麺を載せ、刻みネギや肉と一緒に、箸(はし)で、グジュグジュグジュグジューっと混ぜて食べるのだ。これにも、澄まし汁は必ず付く。
このギトギト麺を体が欲(ほっ)するときは、かなり調子がいいときで、私の中では体調のバロメータメニューとなっている。
餡かけソバ
Noodle in sticky soup
ちょっと気合(きあい)の入った中華麺屋なら、スィーチェッの兄弟メニューのようにあるのが、コーイェーカウソェ。コーイェーとは糊(のり)の水という意味で、いわゆる餡(あん)かけラーメンだ。
長崎皿うどんの餡ほどは粘(ねば)りはなく、フカひれスープぐらいの粘度だろう。麺はスィーチェッと同じく生の中華麺。油分が少ないので、より日本人好みかも。
麺類なのに、焼き飯や中華丼よりも高価な一品ものの頂点が、チェーオーだ。チェーは銅、オーは鍋のことで、その名の通り、ミャンマーでは珍しく、鍋でグツグツ煮込む。
ビーフンが一般的だが、これも平麺や中華麺に替えてもらうことができる。麺と一緒に煮込むのは、肉、ウズラの卵、葉野菜などで、固形の豆腐を入れてくれる店なら、なおうれしい。
高級麺チェーオー。この麺は、細・平ミックスで注文
Sumptuous noodle in soup, Kyay-Oh. Mixed noodle of thin type and flat type is ordered.
注文を告(つ)げると、小僧(こぞう)さんや娘さんから、たいていお決まりの言葉が返ってくる。「チェらウェら」。これは、鶏か豚か、と肉の種類を聞かれているのである。中華系の店なら、たいていこの二つから選べるようになっている。
近頃のミャンマーのチェッダー(鶏肉)事情を話しだしたら、ちょっとやそっとでは止まれそうもないので、ここでは話を前に進めよう。
肉の他にもよく聞かれるのに、「シェーらヨーら」がある。シェーは、英語のスペシェール(特別)からきた言葉で、ヨーは、ヨーヨー、ふつうという意味だ。
つまり「上」か「並」かを問われているのだが、ここは一つ、思いっきり気取って唇(くちびる)をしゃくらせ、「シェー」と言っておけば、そのメニューで一番豪華(ごうか)なのが出てくる。卵が一個多いとかの差なのだが。ちなみに、シェーと発する時、片足片手を挙げる必要はない。
あと知っておくと便利なお店用語を少し紹介しておきましょう。まずは「コンビー」。「売り切れ」という意味なので、こう言われたら諦(あきら)めよう。もともと扱ってない場合なら、「マシーブー(ありません)」か「マヤーブー(できません)」と返される。
語学的表記はともかく、日常のしゃべりでは、ほぼ、これらのカタカナのように聞こえてくるはず。
文化の交差点ミャンマーには、インド人が作るちょっとスパイシーな焼きソバ、パンテーカウソェジョーもある。
パンテーとは、中国人のイスラム教徒のことで、インド人が作る中華料理だからと、最初はシャレだったかもしれないが、今では、正式に、そう呼ばれている。
これは中華よりも、むしろ日本の鉄板焼きソバに近い。と言うか、兄弟と言ってもいい。大きな違いは鉄板の形で、ドラム缶などを加工した薪(まき)コンロの上に置かれている鉄板は、分厚くて丸い。
日本では薄くて幅広のコテ二丁を使うが、インド焼きソバは、分厚くて柄(え)の長い幅狭の鉄コテと、薄いアルミの小皿をコテ代わりに使って、麺を空中高く放り上げながら焼く。
フライはフライでも、飛ぶほうのフライングヌードルだ。途中、小皿は麺に被(かぶ)せて、蒸(む)らしにも使う。
空飛ぶインド焼きソバ
Indian styled (flying) fried noodle
シェーだと、焼き鳥と卵焼きが載せられるが、イスラム系なので豚はない。パンテーの店では、たいてい焼き飯(タミンジョー)もやっており、これまたイケる。
他にも、お粥(かゆ)に勝るとも劣らない優しい喉越しの超コシ抜け細麺、ミューソァンとか、平麺と野菜の超辛味炒め、マーラーヒンとか、シャン風の超アツアツ土鍋(どなべ)麺、ミェーオーミーシェーなど、紹介したいものはまだまだあるのだが、次回はいよいよキングオブ麺大国を発表し、のれんをいったん下げることにしたい。
超コシ抜け細麺、ミューソァン
Super
soft thin noodle in soup
野菜と麺の激辛炒め、マーラーヒン
Spicy fried vegetable with noodle
ミャンマー風鍋焼き、ミェーオーミーシェー
Noodle
in hot earthen pot
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