大型動物の生息数ではミャンマー屈指の場所、アラウンドー・カタパ国立公園(Alaungdaw Kathapa National Park)を訪ねた。公園と言っても娯楽施設やアトラクションがあるわけではない。
日本人が描く公園のイメージとは、かけ離れているかもしれないが、人工物が極力少なく原生に近い自然がまとまって残っていなければ、国際基準の国立公園とは認められないのである。
(種の同定は、まだしていません)→コメントへ
なじみのレンジャーたちといっしょにこの森を歩いた総延長は、もう五百キロとは言わないだろう。私の中の野性の勘(かん)をどんどん磨(みが)いてくれた母校のような森だ。
まずは公園管理事務所のある田舎町に泊まり、旧友たちとの再会を楽しみ、最新の状況を確認する。園内のレンジャーからの通報によると、二日前、公園境界の高台にある無線中継小屋近くに野生ゾウの群れが現れて、まだそれほど遠くへは離れていないだろうとのこと。
野生ゾウの群れは、この森のどこかにいる
今回のターゲットは決まった。実は、それだけ歩いていても、この森の野生ゾウに出会ったことは、それまで一度もなかったのだ。なかなか会えない理由の一つは、木々が密生していて見通しが利かないこと、もう一つは、絶えることのない密猟者に対する彼らの警戒心のせいである。これは、ほとんどの動物に言える。
ドアのないジープで凸凹道を走ること三時間。中継小屋に投宿し態勢を整え、一気に四日分の彼らの足取りを追跡することにした。ゾウの群れが通った後は、林床(りんしょう)の草が進行方向に向かって倒れ、好みの竹や若い木はへし折られている。その上、所々で道標(みちしるべ)代わりにハンドボール大のフンまで落としてくれている。
野生ゾウがへし折った生木
ただし、最短最良ルートで目的地を目指す登山家と違って、彼らは食べたいものを食べ、休みたいところで休みながら森の中を自由にぶらついているだけなので、その追跡は補償(ほしょう)のないガチンコのオリエンテーリングみたいなもの。
崖(がけ)の際(きわ)を登ったかと思ったら目もくらむような谷底に下ったり…かと思えば、巨大な倒木を乗り越えたり、ぬかるみを横切ったり…まるで“ついて来れるものなら来てみろ”とでも挑発(ちょうはつ)されているかのようだ。
歩き始めて約一時間。四方に散らばり消えかけていた複数のゾウの足跡は、しだいにくっきりとし、一つの方向に向かい始めた。リーダーのチッポーさんは、丸い木の葉を一枚むしり取り、持っていた食用の発酵茶葉(ビルマ語名:ラペソ)を乗せて、木の枝の股に挟むように置き、何やらモゴモゴつぶやき始めた。
この森を守る精霊に、森を行く我々四人を守ってください、そして、ゾウを見せてくださいとお願いしたのだった。
碁石模様のチョウは シジミチョウ科の Castalius rosimon あたりではないでしょうか。分布はインドから小スンダ列島。 Field Guide to The Butterflies of Thailand という小さい図鑑で絵合わせしただけなので、同定というほど確実なものではありませんが。
返信削除三英さんへ
返信削除小ささ、形、たたずまい(?)から、シジミチョウっぽいなとは、なんとなく感じていたのですが、科どころか属まで飛び越し、いきなり種レベルにまでグッと接近していただきまして、本当にありがとうございます。
ちなみに、このチョウが吸っているキク科っぽい花は、田畑の開墾や道路工事などで土を引っくり返した場所に真っ先に生えてくる、ミャンマーではよく見る草ですが、抗癌作用があると信じられています。
こんな花も含め、同定前の生き物も、どんどんブログで紹介していきますので、その分野に詳しい方々のコメントを、お気軽に寄越していただければ幸いです。
大西信吾