2010年8月11日水曜日

絶品!雨後の“タケ”

愛媛新聞「ぐるっと地球そのままクリック!愛媛」'07年10月6日原文追補

日本では猛暑だったという'07年8月、私は湿度80%の森にいた。雨季の突入から三ヶ月が過ぎ、新たな現場に散らばった各ゾウ使い班の暮しも、すっかり落ち着いていた。

以前ご報告したように、雨季の森は食材の宝庫だ。数ある食材の中には、降り続く雨で森じゅうが濡れスポンジのようになった7、8月になって、やっと旬を迎えるものもある。その代表がタケノコだ。収穫時期も意外なら、その採り方も日本人の常識を突き抜けている。

うつむいて掘り起こすのではなく、見上げるほどに伸びたものを叩き伐るのである。いかにノッポになっても、葉っぱが開くまではタケノコで、節(ふし)の数の上半分は食べられるという。つまり、8節あるなら上の4節は食べられ、9節ならば真ん中の5節目の味は保障できない、というわけか。

一方、地面に目を落とせば、そこには、もう一つのお宝がにぎわっている。タケはタケでも茸(たけ)のほう、見つけたのはモーピューと呼ばれるキノコで、直訳すると白茸となる。やはり8月頃が旬で、これが顔を出すと雨季が峠を越えた印といわれる。


洋の東西、緯度の南北を問わず、各地で食べられているキノコ類は、さすが、味も香りも裏切らない。けれども、その誘惑と引き換えの危険も常に伴う魔性の成り物ではある。

人命を奪う種類はミャンマーにも当然あるはずで、軍隊では野営中のキノコの採集、調理を禁止しているほどである。確かに、採った者が、名うてのオッチョコチョイだと分かったなら、できればパスしたいところである。

で、隣でキノコを手にヘラヘラ笑っているサン・プー君はというと…ゾウ使い一家に生まれ、森の中で育った生粋(きっすい)の森人(もりびと)だ。軍人の目は信用しないが、彼らを怪しんだことはない。

一人が一時間ほどで収穫した野生の恵み

採れたてのタケノコとキノコがたっぷりのスープに、オウサマダイコクコガネの素揚げも添えてもらい、これでもかと腹に詰め込んだ。うまい!

その夜…私は突然立ち上がって踊りだすことも、声を張り上げて笑い出すこともなく、一番鳥の声を聞くまで豊潤の夢の中にいた。

出発前の腹ごしらえ

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