2013年2月8日金曜日

理想の共同体 -Ideal Community-

愛媛新聞「ぐるっと地球」'13年1月10日原文追補
201211月、民族混成の丸太搬出班
Some logging team combined by plural races in Nov. 2012

民政移管(みんせいいかん)に伴(ともな)い、二年前までのミャンマー連邦(れんぽう)は、「ミャンマー連邦共和国(きょうわこく)」と正式名称(めいしょう)を改(あらた)めている。

新憲法(しんけんぽう)の下、多民族の合議(ごうぎ)により国政(こくせい)を進めていくということだが、「名(めい)」の変更(へんこう)が本物かどうか、これからが「実(じつ)」を積み重ねていく正念場(しょうねんば)となる。

初めて奥山の林業現場を訪ねた時は、人と動物の共同(きょうどう)作業に度肝(どぎも)を抜(ぬ)かれたものだが、何度も通ううち、それは異民族の共同作業でもあることが分かってきた。

時代は軍事独裁(ぐんじどくさい)状態。彼らは国有林で働く公務員だが、いでたちは人民服などではなく、みんな思い思いの服を着ていた。さらに彼らの身元(みもと)もまちまち。ほんの百名ほどのゾウ使いの中にも六つの民族が共存(きょうぞん)していた。

例えば、国際通念上(こくさいつうねんじょう)は弾圧(だんあつ)されているはずのカイン族(旧名:カレン族)の親方(おやかた)の下、弾圧しているはずのビルマ族の新米(しんまい)が技の習得(しゅうとく)に励(はげ)んでいる…
諭す親方カイン族、学ぶ若者ビルマ族
Admonishing foreman of Kayin race and leaning youngster of Bamar race

ゾウというとてつもないものの前では、つまらぬ偏見(へんけん)や自尊心(じそんしん)など吹(ふ)っ飛んでしまい、力を合わせる以外に太刀打(たちう)ちする手立(てだ)てがないのかもしれない。名士(めいし)の息子、などの理由でリーダーを選び、下手(へた)な命令で命を落としでもしたらたまったもんじゃない。
民族不問の班長の寄り合いにて
At some gathering of team leaders beyond the racial prejudice

もちろん人がいる限りはケンカもあれば事件もある。それでも名もなき山懐(やまふところ)は、我々の住む町よりは理想郷(りそうきょう)に一歩近づいているような気もする。

学問でも行政(ぎょうせい)でも、体系化(たいけいか)が必要な場面では、あらゆる物事を類別(るいべつ)しようとする。私も論点(ろんてん)を明確(めいかく)にするためには「少数民族」みたいな言葉も使うし、言葉の背景(はいけい)にいちいち引っかかっていては会話も前に進まない。
次世代の職人たちも民族混成
The next generation of workman is also combined by plural races.

けれども本当は、多数とか少数とか分けるところから差別の芽は出かかっているのかもしれない。

0 件のコメント:

コメントを投稿