2012年8月1日水曜日

大峡谷の大鉄橋 -The great viaduct over the great canyon-

愛媛新聞「ぐるっと地球」'12年7月11日原文追補
ゴゥテイッ鉄橋(注1.)
Gokteik viaduct

ミャンマー第二の都市マンダレーと言えども深夜の駅のホームは薄暗(うすぐら)くて話し声もまばら。早朝4時、意外にも定刻(ていこく)どおりに列車は動きだした。
マンダレー駅から出発
Starting from Mandalay station

“ギリギリギリ”出発して間もなく、鉄板を引っかくような音が次々に迫(せま)ってきては消えてゆく。“ピシッ”左のほほを何かにたたかれた。

もともとは原野(げんや)を貫(つらぬ)いた一本の線路。一日上下一便ずつの列車などはのみ込まんばかりに沿線の草木は枝葉を伸ばし、車内にまでも容赦(ようしゃ)なく侵入(しんにゅう)してくるのだ。
シャン台地の始まり
Edge of Shan Plateau

モノクロだった景色がだんだん色づき始めた頃、急な坂を踏ん張るように上っていた列車が突然止まった。そして今度はバックし始めた。
徐々に高度を上げてゆく
Rising an elevation gradually

けど、滑(すべ)り落ちているわけではない。最後尾(さいこうび)が前になって逆向きに上り始めている。スイッチバックだ。

線路も急坂ではジグザグに引くのだが、長く連結(れんけつ)している列車は自動車のように急カーブを切ることができない。

そこで、ジグザグの角ごとに進行方向を逆にし、ブランコのように左右に振(ふ)れながら徐々に高度を上げるのだ。その折り返し点が、ここでは4点、同じ山腹(さんぷく)を二往復半もした。
スイッチバックの折り返しポイント。このままバックして折り返し、画面奥に上る
Turning point of Switchback. The train backs some more, then, turns forward to the inner part of this photo

首尾(しゅび)よくシャン台地に乗っかった列車は、単線の導くまま北東に向かった。薄雲(うすぐも)の向こうで太陽が真南(まみなみ)に昇(のぼ)る頃…見えてきた。緑の中で突(つ)っ張(ぱ)る灰色の直線と曲線。ゴゥテイッ鉄橋だ。完成したのは英国統治下(とうちか)にあった1903年。今もって世界屈指(くっし)の長さと高さを誇(ほこ)る。

ここは鉄道技術の原点が凝縮(ぎょうしゅく)した生きた博物館のような路線。私は人工物への興味は薄いほうだが、これほどまで土地の景色に溶け込める建造物(けんぞうぶつ)もあるのかと素直に感動した。

瀬戸大橋にスカイツリー、まだまだ若いと思った。素直でない私の偏見もあるのだろうが。
眼下を流れるエヤワディー川支流
A branch of Ayeyarwady River flowing under the viaduct

(注1.)ミャンマーの地名の表記は、国名の変更(内外統一)以降、いまだに定まっていない(’11年11月25日書込み参照)。
例えば、有名な仏教遺跡群は、文字をそのまま読めば「プガン」となるが、ミャンマーの人たちが発音する場合「バガン」と濁る。
そこで現在では、口語のままバガンと表記されることが多い。
元イラワジ川なども複数の表記があるが、私の場合、一旦文字は忘れて、いくつかカタカナ候補を挙げてみて、それをそのまま日本人が読んでみて現地の人に一番分かってもらえるであろう候補を使うことにしている。
結果、苦し紛れに私が「ゴゥテイッ」と表記している鉄橋は、各メディア、ネットなどでは、「ゴッテイ」「ゴッティ」と表記するのが多数派のようだ。

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