君は何者?
Periophthamus? Boleophthalmus? Scartelaos? Periophthalmodon?
11月4日付のブログを見た親友から問い合わせがあった。“あのハゼの種類は分かっているのか、めったにいないのか、検索しても見当たらないのだが”。
私も、写真を掲載(けいさい)する前、ネットで画像検索したが、似たような色のハゼは見当たらなかった。そこで、仮にトビハゼの仲間とし、トビハゼ属の学名を記載しておいた。
友だちからの連絡を受け、ちょっと反省し、ちょっとまじめに勉強しようと、ネットサーフィンに乗り出してみた(ネット潟(がた)スキーと呼ぶべきか)。
そこで、しっかりしたHPにたどり着き、拝見(はいけん)し、遅(おく)ればせながら、いろいろなことを学ぶことができた。
基礎の基礎から意外だったのは、英語の“Mudskipper”、言わば“泥の上の跳(は)ねっかえり野郎”は、イコール日本語の“跳び鯊(トビハゼ)”ではないということだった。
まず、ハゼ科(Gobiidae)があり、その下にオキスデルシス亜科(Oxudercinae)というグループがいて、その中の4属の魚が陸上を這(は)いまわれる、つまり“Mudskipper”なのだが、日本語の“トビハゼ”の名は、その中でもトビハゼ属 (Periophthalmus)1属の魚たちに対してのみ当てられるようだ。
淡水に近い汽水域にて
At almost fresh water area with little seawater contained.
例えば、有明海(ありあけかい)の名物、ムツゴロウは、姿も行動もどう見ても“Mudskipper”だが、分類上は、ムツゴロウ属(Boleophthalmus)で、日本語名では“トビ”も“ハゼ”も、かすりもしない。
さらに、トビハゼとは呼ばれない残りの2属が、トカゲハゼ属(Scartelaos)と、日本にはいないPeriophthalmodon属で、飼育マニアの方々の間では、トビハゼ属以外の跳(は)ねっかえり野郎たちを、そのままカタカナでマッドスキッパーと呼んでいるようだ。
改めて、これまでミャンマーで撮ったマッドスキッパーたちを見返してみた。公開指名手配(しめいてはい)の願いも込めて、一部の写真を紹介します。
純海水の砂浜にて、右側が海
At pure seawater sandy beach. They are heading for the sea.
まず、潮が引いたマングローブの上なら、どこにでもウヨウヨいるマッドスキッパー。いかにも泥の上では保護色になりそうな茶色い地色(ぢいろ)に、地味とは言わせぬとばかりの蛍光色(けいこうしょく)の斑点を散りばめたものたちは、背ビレの形などからして、どうやらムツゴロウ属のようだ。
分からないのが先日掲載した青いトビハゼ、いや、マッドスキッパー。時々おっ立てる背ビレには赤いラインも入り、仮面ライダーアマゾンを彷彿(ほうふつ)とさせるトロピカルなやつ。
いくらネット潟スキーに乗りまくって釣り糸をたらしても、こんな色柄(いろがら)ものは、一向(いっこう)に引っかかってくれない。
結局、“比較的似てるな同種の可能性もあるかな”と思ったのは、Periophthalmodon属のベトナムスキッパーぐらいだった。
いずれにしても、同じ場所で二匹見ているので、色の変異(へんい)ではなく、元々こういう青い色の種類なのだと思う。
ところで、泥の上を這いまわるマッドスキッパーの腕力は見るからに強そうだが、ジャンプするときには、尾ビレでも強烈(きょうれつ)に地面を蹴(け)っていることが、写真から見てとれる。かの連絡をくれた友だちは、それを“トビハゼのトビバコ”と例えた。
胸ビレの掻き跡と胴の跡が残る
Tracks of pectoral fins and a body are being traced.
足ならぬ尾ビレと腕ならぬ胸ビレのコンビネーションは、まさに跳び箱だ。そのプロセスは、彼らは助走(じょそう)をつけないので、跳び箱一時間目の低学年の子どものように、まずは手(胸ビレ)を着いて体を持ち上げつつ足(尾ビレ)で地面を蹴るようだ。
次回のマングローブ域の調査では、もうちょっと足元に注意して、マット運動…ではなくてマッド運動に励(はげ)む“泥の上の跳び箱野郎”たちを観察してみます。
魚であることもお忘れなく。もちろん泳ぎも忘れちゃいない
They are not only Skipper but also Swimmer as long as they are fish.
はじめまして、トビハゼの画像を見つけたので投稿させていただきます、池辺と申します。
返信削除トビハゼのサイトを作っています。
http://pro.tok2.com/~mudskipper/index.html
写真のビビッドなやつは、Periophthalmodon septemradiatusのオスです。これは婚姻色が出ています。体をくねらせた後ジャンプするのは求愛行動ですね。トビハゼのものととても似ています。この種のメスは背びれが非常に小さく、体にコバルト斑点があんまりないです。
砂地で集団でいるのはPeriophthalmus chrysospilosです。これは川の本流か海岸沿岸によくいます。
体に明るいコバルト斑点があり、頭を泥にこすり付けて振り振りするのがBoleophthalmus boddartiです。
コメントありがとうございます。後日、知人を通じて、やはり、これは、Periophthalmodon septemradiatusの雄であるという結論をいただきました。その結果は、2012年3月24日のブログに書いています。
返信削除こいつらの婚姻色は面白いですね。少なくともぼくがミャンマーで見る雄は、ずーっとコバルト色をしていて、メスとおぼしき個体の横に近づいた時だけ、すーっと色が抜けて雌と同じ地味ーな色になるのです。数ケ月前にも見てきました。乾季はたぶん地味な時間が長いと思います。
今日はたまたまヤンゴンにいますが、ネットに繋がらないところにいることが多く、なかなか書き込みもご返答もしづらい状況が続いてますが、懲りずにお立ち寄りいただければ幸いです。
コメント、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。
あ、すみません。後日解決されていたのですね。渋川さんなら魚類の専門家ですから。
返信削除ただ、いまマレーシアに来ているGianluca PolgarさんがトビハゼというかMudskipperの分類学者なのですが、Pn.septemradiatusといわれているものには、少なくとも2別種があるといっていて、これから3年くらいの間に結果が発表されると思います。
大西さんの言っておられるように、婚姻色が出ているのにメスのそばに行くと色がなくなるというのは初めて聞きました。
ただ、トビハゼ属の場合はオスの繁殖ベスト日だけは一日中婚姻色が出ていますが、その前後の日はメスが近づいたときだけ色が変わるというパターンでした。
オスメスのペアの写真が撮れたらまた見せていただきたいです。メス側にも何らかの変化が出ているかもしれませんし。
・・・ホントはそちらのフィールドに行きたいです。お邪魔でなければ。ミャンマーでのトビハゼ属についての研究はほとんどないですから。
重ね重ね貴重なコメントありがとうございました。
返信削除少し落ち着いたら、この一年間ぐらいのMudskipperの写真を見返して、また一編書くことにします。
ヤンゴンからはアクセスできたりできなかったりですが、仲里さんのホームページ、分厚い図鑑を持ち歩けない旅の者は本当に助かっているはずです。感謝です。
残念ながら、しばらくの間、ちょっとホームページにもアクセスできないところに行ってきます。
いってらっしゃいませ。お気をつけて。
返信削除お久しぶりでございます。池辺です。
返信削除以前、このセプテムラディアータスでお世話になりました。
いくつかお聞きしたいことがあります。
この写真もありますが、セプテムの雄の、求愛ジャンプは頻繁に見られますか?
セプテム雄はジャンプしないという文献があるのですが、大西さんのこのブログを私信として引用させていただいてもよろしいでしょうか?
お忙しいとは思いますが、お返事をいただきたく、よろしくお願いいたします。
お久しぶりです、池辺さん。
返信削除今もミャンマーにいる時間のが長く、マングローブにもよく行くのですが、いろいろな分野での調査や案内の依頼が多くて、なかなか自身の文章を書くゆとりがありません。
最近、溜まっている写真の整理を始めましたので、そのうち堰を切ったようにドバーッと書いてブログもアップしていく予定です。
前置きが長くなりましたが、ムツゴロウ属ほど頻繁ではないかもしれませんが、雨季の変色しているビビッドな奴のジャンプは何度も見ました。繰り返して雌にアピール、というよりは、移動の際の大きな一歩、といった感じかもしれません。
私の名前を入れてさえいただければ、文章でも写真でも引用していただいて結構です。
お役に立てれば幸いです。
ご許可をいただき、本当にありがとうございます。写真も使わせていただきます。
削除池辺さん
返信削除2016年6月25日の書込みに(古いけど)新しい写真を掲載しています。こちらも参考になるようなら使ってください。