2011年11月11日金曜日

試練のコンビ、その前途 -A future of the eventful pair-

愛媛新聞「ぐるっと地球そのままクリック!愛媛」'11年10月4日原文追補

この雨季、なじみの森での一番の気がかりは、4月15日付ブログでご紹介した高速で走る子ゾウと若いゾウ使いのその後だった。結果は…
一対一で水浴びをする
Taking bath by a one-to-one.

さすがは短期集中特訓。“人隠(かく)れ”を始めてから一週間もたたずに、子ゾウは藪(やぶ)に突っ込まなくなったそうだ。ちょっと背が伸びたようなカイン君は、一回り太くなった雌ゾウを森から連れ戻すことも川で体を洗ってやることも一人でできるようになっていた。

半年前のことを思うと、それだけでも十分なのだが、彼らの上達(じょうたつ)ぶりは私の予想をはるかに上回り、荷籠(にかご)を背負えるまでになっていた。
父親の助けを借りて荷籠を装着する
Fitting the carrier basket with the assistance of his father.

多くのゾウが、人の騎乗(きじょう)に屈(くっ)してからも籠はなかなか受け付けず、綱(つな)だけ胴(どう)に巻いたり木の皮だけ背負ったりしての歩行を何ヶ月も繰り返すのがふつうなのである。

今回は、他の若ゾウたちと共に前足を上げる訓練に励(はげ)んでいたが、一人前のコンビになるまでには、習得(しゅうとく)すべきことはまだまだある。思い通りにできたからといって決して油断(ゆだん)してはならないのが、ゾウ使いであり山仕事である。
訓練に参加するコンビ
The pair is given the training.

実は、私が森に入る直前、一人のゾウ使いが亡くなっていた。彼の命を奪(うば)ったのは子ゾウで、不運な偶然(ぐうぜん)が重なっての不慮(ふりょ)の事故だった。
僧侶を招いての初七日の儀式
Buddhism ceremony led by the invited monk on the seventh day after a person’s death.

事故から四日後、いまだ仲間と共に森のどこかを漫歩(まんぽ)している子ゾウの跡を辿(たど)って、総勢(そうぜい)二十数名のゾウ使いが成ゾウ一頭と連れ立って緑のカーテンをかき分けていった。
事故を起こしたゾウの捕獲に向かう
Going into the forest with a helper bull elephant in order to capture the elephant what caused the obituary accident.

降り注(そそ)ぐシャワーの中、彼らは“人隠れ”の時とは対照的な静寂(せいじゃく)と共に確実に目標を包囲(ほうい)し、無事確保(かくほ)した。
目標の子ゾウの捕獲に成功し、仲間3頭とともに連れ戻した
The team captured the target young elephant and drove him back with three more elephants what were grouped together. 

子ゾウ四頭を誘導(ゆうどう)しながらの帰路、行きは股間(こかん)を濡(ぬ)らす程度だった集落間近(まぢか)の急流が、数時間のうちに胸まで濡らす深さになっていた。

騎乗したゾウ使いにリュックさえ託(たく)せば流れを横切る自信はあったが、念のためにとゾウをあてがわれた。馬跳(うまと)びのごとく裸のうなじから背中にかけて少年ゾウ使いと私にまたがられたチビゾウは、激流(げきりゅう)の中に太い脚を沈(しず)めていった。

川の中ほど、ゾウの頭がガクンと沈んだかと思った瞬間、丸まってゆくゾウ使いの背中を見ながら私の頭は茶色い水の世界に真っ逆(まっさか)さまに突っ込んでいった。

数秒間はもみくちゃになって流されたが、なんとか凸凹(でこぼこ)の川床を踏みしめ、激流の中に立ち上がった。三者は三様(さんよう)に踏みとどまっている。私がバンザイをして無事を伝えると、対岸で待つゾウ使いたちから笑いが沸(わ)き起こった。
お気に入りの森を目指して急流を渡るゾウ
They are crossing a rapid stream toward their favorite forest. 

不謹慎(ふきんしん)とは知りつつ、私は、とんでもない体験をしてしまったことが楽しくてたまらなかった。笑い話ですむか悲劇(ひげき)に終わるか、その境目(さかいめ)は本当に紙一重(かみひとえ)なのだろうと、つくづく思った。そして、ここまで生きてきている幸運に感謝した。

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