2015年1月18日日曜日

ミャンマー踏切事情 -Railway Crossing in Myanmar-

港湾通り沿いに新しく設けられた客車
A new passenger train is allocated to the railway along Strand Road.

最近ヤンゴン市内と郊外を巡る環状線の列車の数が激増し、たまに貨物車が通るだけだった港湾沿いの路線にも客車を走らせるようになったりと、あっちこっちから再々警笛が聞こえるようになってきた。
隣は、サイカー(自転車タクシー)も走る高速道路
Tollway passes beside. Bicycle taxis are also running there.
その結果どうなったか…あっちこっちで交通渋滞に拍車がかかっている。奇妙に聞こえるかもしれないが、私にはそう感じられるのである。

お隣タイのバンコクにある高架鉄道、通称スカイトレインや地下鉄なら、線路が伸びれば伸びるほど、便数が増えれば増えるほど車の渋滞は緩和されるだろう。

ミャンマーの鉄道の場合、基本的に線路は地面を走っており、ヤンゴンの中心地近くの一部の主要道路が線路を越えて立体交差している他は、数々の遮断機が列車と車の通行をしきっている。
最北の終着駅ミッチーナ駅手前の踏切。やって来たのは、オープンタイプの客車。車は遮断棒の回転半径よりも後ろで待つべし
Railway crossing junction just before Myitkyina Station, the northernmost terminal in Myanmar. Open typed passenger coach is passing. Vehicles have to wait before the crossing arm’s turning radius.列車通過後、溜まっていた車がいっせいに雪崩れ込む
After the train passed, jammed vehicles start rushing.

しかもミャンマーの遮断機は手動…と言うより踏切番による人力操作式なので、列車が進入するよりかなり前から閉鎖する。
遮断機が鉄路とアスファルトを分かつ路線で列車の便数が増えればどうなるか…当然の事ながら、あちこちで開かずの踏切のような状態に近づき、線路の両側には、通せんぼされた車がどんどん溜まっていく。

今のところ、鉄道利用者の増加による自動車台数の減少よりも、のべ遮断時間の増加による停滞のほうが勝っていて、渋滞緩和策としては裏目に出ているような印象を私は受ける、というわけである。
ヤンゴンの踏切渋滞。通過中の列車が小さく見える
Traffic jam at a railway crossing in Yangon. Passing train can be seen in the distance.

タモリさんも言っているように、鉄道というのは壮大な交通システムだ。

その中で列車は、それこそシステムの最後の最後に乗っかっている乗り物にすぎない。乗り物だけを増やしても、鉄道機能が向上するとは限らないだろう。
夜行列車の通過を待つ夜行バスの中から。バゴー‐モーラミャイン間
The shot is from a night bus which is waiting a night train passing. Between Bago and Mawlamyine

一方、以前に紹介したマンダレー‐ラーショー線や、最南のタニンターイー管区を走る路線など、一日上下一便ずつというようなローカル線だと、便数の増えすぎには、また違った問題が生じるおそれがある。

地方にも増便計画があるのかどうかは不明だが、先回りして言っておこう。 
地元の人にとってはローカル線路は道の一つ。タニンターイー管区内ダウェー‐イェー間
Local railway is a kind of paths for local people. Between Dawei and Ye

原野を抜けて走る田舎の鉄道は、ズバリ、地元の人の通り道になっている。

運転士さんもよく分かっていて、線路が湾曲していたり茂みが大きくて多くて見通しの悪い区間などでは、頻繁に警笛を鳴らしながら走る。 
鉄橋を歩いて渡っているときなど、耳を澄ませて列車の接近を逸早くキャッチしなければ大変なことにもなる。映画「スタンドバイミー」の世界だ。

切符を買うお金がないので列車に乗る代わりに線路を歩くというのではなく、あくまで本物の道と道とを繋ぐ補助的通路の役割のようである。
一日上下一便ずつの列車に注意
Be careful of one up train and one down train per day.
あみだクジの長い縦軸が線路だとしたら、短い横線が道で、右側の集落から左側の集落に行くのに、途中で線路を歩いて移動するという形だ。

上下便が一度ずつ一瞬通過したあとの長ーーーい時間、暗黙のルールでもって地元の人が原野に抜けた空間を有効に利用する、これはこれでいいことだと思う。

あくまで公には存在しないはずの自己責任レベルのことではあるが、もしローカル線の便数を増やすのなら、まずは地元の人の線路の歩行状況も調査していただきたいものだ。
歩道と線路が交差する
A local path and a railway are crossing.

あくせくしない鉄道の旅には私は深い意味を感じ、今後もローカル線はローカルに存在していてほしいと願っているが、アクセス重視の都市交通の切り札として鉄道を改善するのだったら、システム全体を俯瞰して、いろいろな課題に同時進行で取り組むべきだろう。

鉄道の他にも、現在は中心地への乗り入れを禁止している二輪車の導入や、誰も手を付けていない駐車場の建設など、検討すべき都市交通の課題はいくつもある。

日本でリコールされた商品や、起こした事故が解決していない商品が、もし新興国や途上国に売りつけられていたとしたら…ふつうの人間の感覚では許されることではないだろう。
ヤンゴン中央駅構内に駐機中の列車たち
Trains standing by at Central Yangon Station

鉄道こそ貿易の鉄板。どこの国のものと比べても引けをとらない技術とシステムではないだろうか。中でも、何度大地震に見舞われてもいまだに無事故を続けている新幹線は、外交セールスの切り札、自信を持ってお勧めできる日本のエース格だ。それこそ高速鉄道の入札などで負けてる場合じゃない。国の中心の方々には、安全でいいものは、どんどん外に向かって売り込んでいただきたい。

今、原発などセールスしている場合なのでしょうか。

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