2011年4月22日金曜日

メインマラー大ワニ列伝、その1.

闇夜の川面を泳ぐイリエワニ。その姿、夜空を滑る竜の如し

野外で物のサイズを目測(もくそく)することは、かなり難しい。まして、目安となる見慣れた人工物のない自然の中ではなおさらだ。

恥を忍んで実体験をご披露(ひろう)いたしましょう。

マングローブに覆(おお)われたメインマラー島には、足跡の発見などからヒョウがいるとされている。初めてそう聞かされたのは、十数年前に島を訪ねたときのことだった。

それから、島内の川沿いを動物を探しながら小型船で巡(めぐ)っていると、岸辺の木立の向こうに動いている黄色いものが見えた。“ヒョウだ!”。色といいサイズといい…。

ファインダーをのぞき込み、望遠レンズ越しに目が合った。そして、やっとその正体が分かった。それは、虎毛の猫だった。たぶん、島に一つある僧院に連れ込まれたものだろう。

私は唖然(あぜん)とし、自分の目測力のなさに愕然(がくぜん)とした。事前に聞いた情報と自らの願望(がんぼう)が、遠近感のつかみづらい単調な森の中で、吹けば飛ぶよな猫を、たくましいヒョウに見せたのだ。実際に野生のヒョウと森で鉢合(はちあ)わせになったことも木の上から撮影したこともある私をしてだ。

こんな体験もある私は、各地で噂(うわさ)される未確認動物(UMA: Unidentified Mysterious Animal)の目撃談には、かなり懐疑(かいぎ)的でいる。特に、熱帯地方での水辺の怪獣の正体は、その多くが特大のワニではないかと思っている。

4月8日付の書き込みのとおり、メインマラー島には、確かに怪獣級のワニがいる。

“大きい”は、ビルマ語で“ジー”で、例えば、シャン州にある町の名前“タウンジー”の意味は、“大きな山”となる。観念(かんねん)的にも使われ、もし誰かを「セヤー・ジー」と呼べば「大先生」「大だんな」、「ジャパン・ジー」と呼べば「日本人の大将」みたいな、おだてや敬(うやま)いにもなるが、“ジー”を付けるのは相手への親しみの表れでもある。

メインマラーの大ワニたちは、大きい順に“チュンパッジー(島巡り大将)”、“パーピュー(ほほ白)”、“メーロンジー(黒丸大将)”、“ナーピュージー(鼻白大将)”、“アーページー(あご欠け大将)”というあだ名を周辺の住民からもらっている。

パーピューだけはジーが付かないが、最も頻繁(ひんぱん)に人や家畜を襲った前科者(ぜんかもの)だから、恐怖と憎(にく)しみの感情しか持てないのかもしれない。単に語呂(ごろ)が悪いだけかもしれないが。

全長は、すべて4.5メートルオーバー、年齢もチュンパッジーになると百歳オーバーではと保護官たちは推測(すいそく)しているが、実測(じっそく)したわけでも確かな記録があるわけでもない。

けれども、保護官たちが持っている生来(せいらい)の野性の勘(かん)と、外国から来る研究者をサポートしてきた経験と知識は、それなりに信用していいと思う。3メートルクラスのワニなら、捕獲して実測した経験も何度もあるし。

ただ、去年と一昨年見たアーページーと今年見たナーピュージーは、どうも同一人物ならぬ同一ワニ物ではないかと私は疑っている。

ちなみに、アーペーの写真は、'10年11月30日付の2~5番目、'10年12月15日付の3番目、「'11年3月1日付の3番目で、ナーピューが4月8日付の最後に掲載しています。」→後にアーペーと判明(続く)

アーページー(推測)、左が鼻先('10年2月8日)

ナーピュージー(推測)('11年2月10日)→後にアーページーと判明

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