2011年1月4日火曜日

どっちがエコ?

愛媛新聞「ぐるっと地球そのままクリック!愛媛」'10年1月16日原文追補

今この原稿をパソコンで打ち、ネットにつないで送信しようとしている私には、ちょっと耳の痛い話をあえてします。

現在ヤンゴンにいるが、数日後には再び地方に出て電線からは遠く離れる('10年1月現在)。そのため、端(はな)からパソコンは持ってゆかず、携(たずさ)えるカメラにしても、いざとなったら乾電池でも撮れる機種に限定している。

まるで二つの文化圏(ぶんかけん)を行き来しているかのようで、読み書きの媒体(ばいたい)も電子から紙へと主役がかわる。

ゾウの健康手帳に筆記する森の獣医師

最近、ネットなどの電子媒体は資源を消費することがないので紙媒体よりもエコだという意見を時々聞くことがあるが、本当にそうだろうか。

確かに紙は木などから加工して作るのだから、印刷物になるまでには莫大(ばくだい)な資源もエネルギーも消費する。けれども、いったん完成してしまえば、何万回くり返し読もうと、本や新聞そのものがエネルギーを消費することは一切(いっさい)ない。

一方、電子媒体は、一時間読めば確実に一時間分の電力を消費する(注1)。その電力を生み出すまでには、それ相応(そうおう)のインパクトを環境に与えているはずだ。さて、どっちがエコなのだろう。

よく似た対比は、割り箸(わりばし)VSマイ箸にも言えるかも。イメージではなく、本気で環境への影響を分析するのなら、使用後のマイ箸を洗うときに使う洗剤と水の環境へのインパクトも計算に入れないと不公平になる。

割り箸は、もともとは丸太から角材を取ったあとに余る幹(みき)の周辺部から作れるのだが、木である以上、使った後は薪(まき)や炭にもなれば紙にもなるし、最後には土にも返る。

素材としても、これほど人体にも環境にも優しいものはない。なのになぜ、有害な化学合成品であるレジ袋と同格(どうかく)の扱いを受けなければならないの?

電気の通(かよ)っていない森の奥
最近では乾電池でも長持ちする小さなLEDライトも普及しつつある

問題は、「使い捨て」という処理方法なのだろう。ミャンマーでも、観光立国を目指した十数年前から衛生環境向上のため、麺(めん)屋や中華屋ではビニール包装(ほうそう)された竹箸を使い捨てることが義務付けられた。

けれども最近では、熱湯消毒して再包装した箸が無許可で出回っているという噂(うわさ)もある。そうなると、エコの優等生リユースではあるにしても衛生面の保障はなくなる。ゴミの分別回収にいたっては、やっと検討が始まったばかりである。

客が使った割り箸を竈(かまど)にくべてご飯を炊き、燃え残った灰は自家農園にでも撒(ま)けば、これぞまさしくエコ食堂の完結なのだが…いったい箸一本で、どれほどのお湯が沸かせるものだろうか…

洗濯(せんたく)や水浴は川面(かわも)で行い、
飲食用には河原に掘った穴に染(し)み出す水を汲(く)んで持ち帰る

愛媛を発(た)つ前に友だちがくれたインスタント味噌汁をすすりながら、ふと、そんなことに思いを巡(めぐ)らす独り者でありました。


(注1)最近ではバックライトを使わない電子ペーパーの進歩が目覚(めざま)しいが、それでも、操作(そうさ)をすれば必ず電力を消費する。

2 件のコメント:

  1. 太陽光パネルで発電するもん。化石燃料使うてへんもん。新聞は配達するときバイクで排ガスまき散らすやん。紙かて何万回もは使えへんで。と、感情論にながれてしまいそうな話題ですが、パネルつくる際や木を溶かすときに使うエネルギーやら環境負荷について、正確な数字がわからへんのが問題ですね。だれか、公平に緻密に正確に計算してくれへんかなあ。その結果でどっちがエコか比べたいなあ。利害を抱える人の計算は信用できひんさかいね。町内100世帯×10年くらいの単位で答え出してもらえるとわかりやすいねんけど。
     関係ないけど、ぼくが日本の家庭に復権させたいエコ三種の神器は、1.魔法瓶(電気なしの真空のやつ)、2.圧力なべ、3.太陽熱温水器(昔、屋根の上に乗っかってたやつ)です。 
    ほな。

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  2. イメージや感情にたなびき、付和雷同してしまいそうなムードには、ぼくも危機感を覚えることがあります。人畜無害で土にも還る割り箸と有害で土に還らないレジ袋を、使い捨てということだけで一くくりにしてしまうことからして、ちょっと薄いような…
    視覚媒体に関しては、一度っきりしか見ないものは電子、長期保存して繰り返し見るものは紙が、よりエコなんじゃないかなという気がしています。これまたザックリ薄い段階で恐縮ですが。
    例えば、いつも傍らに飾っておきたい愛しい人の写真。印画紙に焼いて額装するのと、デジタルフォトフレームでディスプレイし続けるのとでは、とてつもない差がついてしまうでしょうね。
    完全に中立な機関による環境へのインパクトの分析や試算、ほんと熱望します。自力でできないのが情けないのですが。
    ミャンマーでは、電線のある町でも信用できませんので、ポットと言えば内側がガラスの魔法瓶がスタンダードです。ゾウ使いの飯場での肌寒い真夜中、ふと目が覚めたとき、魔法瓶の中の夕べのお茶の残りをグビッとやると、体の芯からホッコリします。
    そう言えば、昔、近所の屋根の上にも太陽熱の湯沸し、ありました、ありました。今、あれが定着していない理由は、シャワーでもいい夏場にガボガボ沸いて、熱ーい湯船に首までキューッと浸かりたい冬場に沸きにくいからなのでしょうか。
    特に冬場に晴れ間の少ない北海道や日本海側や南西諸島では厳しいでしょうが、太平洋側ならいけるかもしれませんね。「ママー、ゆワイターでお風呂が沸いたよー」というCM、何十年ぶりに思い出しました。

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