2010年9月29日水曜日

ミャンマーにおけるカワゴンドウと漁師の共生漁‐下編

国連食料農業機関(FAO)専門誌「TIGERPAPER」寄稿Vol.35:No.2 -Mutualistic Fishing Between Fishermen and Irrawaddy Dolphins in Myanmar- (2008年)原文、写真追加


問題点

カワゴンドウは、エンジン付の船を嫌っているようだ。私の観察では、漁師と漁をやっている間でも、エンジンボートが近づくと、カワゴンドウはしばらく漁を中断していた。地元のエンジンボートの船頭は、共生漁の操業に気付くと紳士的に航路を変更し、漁の邪魔をしないようにするが、より大きい客船や貨物船の船長は意に介さない。

ここのカワゴンドウ生息地の南限から約10キロ下流には、ミャンマー第二の都市、マンダレーがあるが、そこは水上交通の要衝であるため、エヤワディー川の水面も川岸も多くの船で混んでいる。そして、多くの観光船は、生息地の南限付近にあたる有名な古都、ミンゴンまでさかのぼる。出会った漁師や船長は、カワゴンドウはミンゴンより下流へは行かないと口を揃えていた。


いくつかの違法漁法は、魚の数を減らし、直接カワゴンドウも傷つけるであろう。最もひどい漁法は、いわゆるショック漁法で、強力なバッテリーや発電機で水中に強い電流を流し、感電した魚を獲る。合法な漁師によると、この違法漁法で、2005年に一頭のカワゴンドウが感電死したという。今、政府は違法操業を取り締まろうとしているが、まだ内密に行われている。

漁師とカワゴンドウが魚を分け合えるのは、川に十分な魚がいるからこそである。川があまり汚染されず栄養分で満たされていれば、魚たちは活発に繁殖する。その栄養分は、広大な集水域の豊かな森によって絶えず供給される。もし、これらのバランスが崩れたなら、魚の数は減るであろう。


そして、漁師とカワゴンドウは、限られた魚を巡るライバルとなり、さらに漁師は、カワゴンドウそのものを獲物として追うことにもなりかねない。近代漁法の中には、川を巡るバランスを崩す一要因になる可能性を持つものもある。そしてそれは、魚の数を激減させる危険性をはらんでいる。

政府はカワゴンドウを完全保護動物として登録している。そして、畜産水産省水産局はWCSの協力のもと、カワゴンドウそのものとカワゴンドウとの漁文化を守ることに協力してくれる漁師に対し、身分証明書を発給する制度を実施している。彼らは、監視、調査、教育の普及に協力する。しかし、ある漁師は、まだ身分証明書を持つことに同意していない。そうした漁師らは、誰からも束縛されたくないのであろう。

エヤワディー川チンドウィン川には完全な淡水産のフグがいる。直径(?)7センチぐらい。

もし、誰かが裕福になりたいと願うなら、誰がそれを止める権利があるだろう。もし、誰かが楽な方法でいきたいと願うなら、誰がそれを止める権利があるだろう。少なくとも我々は、この伝統的な漁師の生活様式を、劣っているとは思うべきではない。事実、彼らがこの漁業様式を守り続ける限り、我々は持続的に十分な魚をいただくことができるのである。我々は、彼らがプライドを持って彼ら独自の生活を営めるよう励ますべきである。


今の私にできることは、この動物と人との奇跡的な関係を紹介し、いかに彼らが高貴で、いかに彼らのやり方が地球に無害であるかを知らせることであろう。

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