2010年7月15日木曜日

森は珍味の宝庫

愛媛新聞「ぐるっと地球そのままクリック!愛媛」'06年11月11日原文追補

 家はできた。それもシックハウス成分ゼロの総竹造り高床式住居。次は、いよいよ腹を満たす番だ。台所を建て増し、石を寄せてゴトクにし、あたりで薪を刈り取ってきて準備は万端。

食べられる葉の部分と茎を仕分ける

森の中では、なかなか補えないのが炭水化物だが、一ヶ所に一年以上留まることのないゾウ使いたちは畑は作らず、米や油や調味料などの多くは、麓の村から運んできている。けれども、たいていのメインディッシュは森の恵みでまかなってしまう。特に雨季の森の床は植物に満ちあふれ、彼らの眼力にかかれば、人が食べられるものも数多く見つけられる。この一ヶ月弱の滞在中にも、八種類の野生の植物をいただいた。

シダの新芽やフキなどは日本でもおなじみだが、食べられる熱帯の植物と聞いて真っ先に頭に浮かぶものといえば…もしやバナナ、ではないでしょうか。 実際、ここの森にも野生のバナナはあちこちに群生している。けれども、そんなバナナの実は、十秒と口に入れていられない。強烈に渋いのだ。あんなのはサル様にくれてやるがよかろう。人間様が食べるのは茎のほうだ。

バナナは巨大な草なので、人の太ももより太い茎でも木質ではなく、特に芯の部分は煮ると柔らかくなってうまい。ヤンゴンあたりでは朝食の定番となっているモヒンガー(魚ベースの汁をかけて食べる米の細麺料理)にも、バナナの茎や根は入っている。もちろんそれは栽培種なのだが。

ゾウの糞の傍らを掘る

ゾウ使いの特権ともいえるタンパク質のごちそうもある。ゾウの糞に付く特大の糞虫、オウサマダイコクコガネだ。日本のカブトムシよりも一回り大きく、地底を掘り進むショベル状の頭は、ムシキングの土俵に上げても強力な武器になりそうだ。油で素揚げにするのだが、乾季に食べられる幼虫はクリーミーで、雨季の成虫はエビやカニに似た味がする。

ゾウ使いは毎朝、森に放しているゾウに会いにゆく道すがら、糞の傍らに潜っている奴らを掘り出してくるのである。私個人としては、軍配を上げたいのは成虫のほうだ。幼虫にはないあの香ばしさは、日本にいても、ふと恋しくなる。まさに雨季のジャングルフードの王様である。









以前、拙著「ゾウと生きる森」の中で、世界一辛いであろうトウガラシにミャンマーの辺境で出会ったことを書いたが、この旅では、異臭番付なら間違いなく世界屈指であろう世紀の大珍味に出会った。あまりにも強烈すぎるので、今、無防備にご覧になっておられるモニター上では具体的描写も写真も控えますが、ヒントとして、料理の呼び名だけでも紹介しておきます。その名も、ミャウ・チー・カ(サル・消化物・苦い)!

左:サルの煮込み、右:オオトカゲの煮込み

2 件のコメント:

  1. ゾウと巡る季節にも記述がありましたがオウサマダイコクコガネの成虫の素揚げの味・・うちの次男が福岡の子ども劇場のキャンプでセミの素揚げを食べた経験があり、「エビの味がしてうまかった」と言っていたのと重なりました。このキャンプは小4~青年で実施する、おばちゃんたちは手出し口出し禁止の「高学年キャンプ」でして、ほかにもなかなかの経験をした模様です。    kiyo柑

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  2. kiyo柑さんへ
    いつも読んでくださり、ありがとうございます。そして、貴重な体験談、大感謝です。
    ぼくは、まだセミは食べたことないのですが、やはり、殻をまとった節足動物同士は、構造も似ているだけに味も似てるんでしょうね。
    昆虫食は、興味本位だけでなく無益な殺生でも決してなく、自然と共存する時代になればなるほど、効率のいいタンパク源として評価されてくると思います。
    子供の頃から、こういうことで先入観を少しずつでも取り除く体験をしておくことは、本当にいいですね。
    6月下旬、母校のある沖縄へ行ってたのですが、梅雨明け直後のピーカンの中、蝉時雨、いや、蝉豪雨が凄まじかったです。
    昨日梅雨明けした瀬戸内沿岸でも、ニイニイゼミがだんだん勢力を強めてきましたね。クマ公(クマゼミ)の“ショワショワショワ”で叩き起こされる日も、もうそこまで来てるのかな。
    大西信吾

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